志望校に落ちた。
志望校に落ちた。
当たり前だが私がじゃない、私の教え子の話だ。
才能のある子だった。地頭の良い子だった。
この子なら大丈夫だと思っていたし、事実第二志望の学校までは何の問題もなく受かっていた。
これまで指導してきた子どもたちと同じように、この子も第一志望の学校に入れてあげられると思っていた。
これまでと同じように上手くいく保証などどこにもないのに。
その子の実力が努力に裏打ちされたものではないことには気づいていた。
地頭が良いからこなせてしまうだけで、それが問題だということにも気づいていた。
それなのに、自分の忙しさを理由にそれを矯正する手間を惜しんだ。
その子には私のおかげで頑張れた、と悲しい笑顔でお礼を言われた。
第一志望の学校でやりたいことがある、と話してくれた時とは全然違う笑顔だった。
この春からも私は多分何食わぬ顔で新しい生徒を受け持つ。
でも、学生のころよりも上手に教えられるようになったはずなのに、
あの頃より真摯に取り組んでいない。
だって、教え子が第一志望に合格できなくても、そんなに悲しくなかった。
表面上、あんなに大事に思っているように見せておいて。
その子はこれから第二志望の学校でやりたいことを探すと思う。
かしこい子だから、きっと入った先の学校でうまくやるだろう。
自分が志望校に落ちた経験も、教え子を落とした経験も無かった。
彼にかける最前の言葉が見つけられなかった。
それがただただ情けなくて、やるせなかった。